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東京地方裁判所 昭和43年(ワ)1752号・昭43年(ワ)2975号・昭44年(ワ)1341号 判決

A・C各事件原告B事件被告

森林伸吉

A・C事件原告

小池庄一

ほか一名

B事件原告

高橋啓太郎

ほか一名

A事件被告

大家広二

ほか一名

B・C事件被告

ほか二名

第一主文

一、大家広二、柏倉末治(ともにA事件被告)は、連帯して、森林伸吉(A・C事件原告、B事件被告)に対し、金三〇六万七、五七〇円、小池庄一、小池もと(ともにA・C事件原告)に対し各金七四万四、九二〇円およびこれに対する昭和四二年一一月一日からそれぞれ完済まで年五分の割合による金員の支払をせよ。

二、高橋啓太郎、高橋すい(ともにB事件原告)の請求および森林伸吉、小池庄一、小池もとのその余の請求は、いずれも棄却する。

三、訴訟費用中、森林伸吉、小池庄一、小池もとと大家広二、柏倉末治との間に生じた分は五分してその四を大家、柏倉の、その余を森林、小池両名の各負担とし、高橋啓太郎、高橋すいと森林伸吉との間に生じたものはすべて高橋両名の負担とし、森林伸吉、小池庄一、小池もと、高橋啓太郎、高橋すいと国、東京都、鉄建建設株式会社(ともにB、C事件被告)との間に生じた分は、すべて森林、小池両名、高橋両名の負担とする。

四、この判決一項は仮に執行することができる。

第二本訴請求の趣旨

一、A・C事件

「被告大家広二、同柏倉末治、同国、同東京都、同鉄建建設株式会社(以下、鉄建建設という)は、連帯して、原告森林伸吉に対し金三五〇万円、同小池庄一、同もとに対し各金一〇〇万円およびこれに対する事故発生後である昭和四二年一一月一日からそれぞれ完済まで年五分の割合による金員の支払をせよ。」との判決および仮執行の宣言。(森林京子死亡による夫・父母からの損害賠償・遅延損害金請求)

二、B事件

「被告国、同東京都、同鉄建建設、同森林伸吉は、各自、原告高橋啓太郎、同すいに対し各金三〇〇万円およびこれに対する訴状送達の翌日である昭和四三年四月四日からそれぞれ完済まで年五分の割合による金員の支払をせよ。」との判決および仮執行の宣言。(高橋秀夫死亡による父母からの損害賠償・遅延損害金請求)

第三争いない事実

一、死亡自動車事故の発生

とき 昭和四一年一一月一三日午後三時ころ、雨

ところ 東京都大田区中馬込三丁目二七番地先第二京浜国道上

第一事故車 ニッサンセドリック六四年型、普通乗用自動車(横浜五ほ二六九六号)

右運転者 柏倉末治(昭和一八年六月一四日生)

第二事故車 パブリカ六五年型普通乗用自動車(品川五ま八七四三号)

右運転者 亡森林京子(昭和一九年八月二日生)

死者 第二事故車運転の森林京子(即死)、第一事故車助手席同乗の高橋秀夫(即死)

二、事故の態様

第一事故車が五反田方面から川崎方面に向けて進行中、路面を滑走してセンターラインを超え、対向車線(上り車線)に進入し、これと対向して来た第二事故車が衝突、ために右二名が死亡した。

三、本件事故現場の状況について

本件事故現場は上・下線とも三車線の一級国道であり、東京都の発注により鉄建建設が都営地下鉄の建設工事中であつたため、路面の一部に鉄製覆工板が敷設されていた。

四、責任原因について

(一) 被告大家広二につき(A事件)

被告大家は、被告柏倉末治の使用者であり、また第一事故車を所有して運行の用に供する者である。

(二) 被告森林伸吉につき(B事件)

被告森林は、第二事故車を所有して運行の用に供する者である。

第四争点

一、原告森林伸吉、同小池庄一、同もとの主張(A・C事件)

(一) 責任原因

1 被告大家広二につき

被告大家は、第一事故車の運行供用者として自賠法三条の責任がある。

2 被告柏倉末治につき

被告柏倉は、安全運転義務を怠つたため、第一事故車を滑走させ、センターラインを超えて第二事故車の進路直前に進入停止衝突させた過失があつたから、民法七〇九条の責任がある。

3 被告国、同東京都、同鉄建建設につき

(イ) 道路の瑕疵

本件事故現場は、地下鉄工事のためアスファルト舗装の代りに滑り易い鉄板を敷設してあつたが、表面に漏れた残土片、埃が付着していたためその路面の状況がわからなくなり、また本件のように雨のときには非常にすべり易い危険な状態になつていた。しかも滑走等の危険を告知し、あるいは徐行を注意する標識も設置されておらず、道路の設置および管理に瑕疵があつた。

本件事故は第一事故車側の要因とともに、右瑕疵があずかつて横すべり・滑走の現象を助長し、発生をみるにいたつた。

(ロ) 責任の帰属

被告国については、その管理する本件道路の設置管理に瑕疵があつたものというべく、国賠法二条一項により、被告東京都は、国の委任を受けて道路の管理を分担していたから同じく国賠法二条一項により、また被告鉄建建設に地下鉄工事を請負わせながら、前記危険状態を放置した過失に基づき、民法七〇九条により、被告鉄建建設は、前記危険な道路状態を作り出し、これを放置した過失に基づき、民法七〇九条ないし七一七条により、それぞれ責任を負う。

(二) 亡京子死亡による損害

1 葬儀費用等 一七万七、七三〇円

京子の死亡により、原告森林は右金額を支出した。

2 逸失利益とその相続

(イ) 第一次的主張

亡京子は、死亡当時二二歳であり、「オニギリ京」の商号でお茶漬屋を営み、月二七万円の収益をあげ、その必要経費は月二〇万円であつたから、月額七万円の純利益があり、本件事故がなければ少くとも満四〇歳に至るまでの一八年間右収入を得られた筈で、その逸失利益の現価は一、〇五八万四、〇〇〇円を下らない。

(ロ) 第二次的主張

亡京子は、一般労働者と同じく、五〇歳までの二八年間、月平均二万四、〇〇〇円の所得をあげ、生活費を差引いても、その純収益は月一万二、〇〇〇円であるから、その間の逸失利益の現価は二四七万九、六八〇円を下らない。

(ハ) 相続

原告森林は亡京子の夫として、原告小池庄一、同もとは父母として、いずれも法定相続分に従い、原告森林においてその二分の一、その余の原告らにおいて各四分の一宛、右請求権を取得した。

3 慰藉料

原告森林は、亡京子と結婚して一年足らずであり、妊娠三か月の同女と将来の生活設計等期待に満ちた生活を送つていたこと、原告小池庄一、同もとは、同女に生れる孫を楽しみにまち老後のたよりにしていたこと、を考慮すると、これを慰藉するため、原告森林につき二〇〇万円、その余の原告らにつき、各五〇万円が相当である。

4 弁護士費用 六〇万円

ただし、原告森林の負担分。

5 損害の填補

強制保険により、原告森林は七五万円、同小池庄一、同もとは各三七万五、〇〇〇円、合計一五〇万円の給付を受けている。

6 結び

よつて、原告らは、原告らの取得した損害賠償請求額から填補分を差引き、原告森林は七三一万九、七三〇円のうち金三五〇万円、同小池庄一、同もとは各二七七万一、〇〇〇円のうち金各一〇〇万円およびこれに対する遅延損害金の支払を求める。

二、原告高橋啓太郎、同すいの主張(B事件)

(一) 責任原因

1 被告森林伸吉につき

被告森林は、第二事故車の運行供用者として自賠法三条の責任がある。

2 被告国、同東京都、同鉄建建設につき

前記一、(一)3記載の原告森林らの主張と同旨。(たゞし第一事故車側の要因をのぞく)

(二) 亡秀夫死亡による損害

1 治療費 六、六〇〇円

亡秀夫のため、原告両名は右金員を各二分の一宛支払つた。

2 葬儀費用 二九万五、五一〇円

ただし、原告両名において各二分の一宛支払つた。

3 逸失利益とその相続 計七五一万四、四七九円

亡秀夫は死亡当時二二歳の健康な男子で中学卒業後、大陽工業有限会社に自動車板金工として七年余勤続し、事故がなければその停年である五五歳までの三二年間に少なくとも年額五八万七、四八五円の給与収入があり、その生活費は年額一八万七、九〇八円をこえず年額三九万九、五七七円の純収益をあげ得たものであるからその逸失利益の現価は七五一万四、四七九円である。

原告両名は、父母としていずれも法定相続分に従い、右請求権を各二分の一宛取得した。

4 慰藉料

亡秀夫は原告両名の二男であるが、長男が他家の養子となつているため、事実上の長男として老後の期待をかけていた原告両名にとつて、その慰藉料は各一〇〇万円の合計二〇〇万円が相当である。

5 損害の填補

原告両名は、強制保険により各一五〇万円、合計三〇〇万円の給付を受けている。

6 結び

よつて原告両名は、原告らが取得した損害賠償請求額四九〇万八、二九四円から填補分を差引いた残額各三四〇万八、二九四円のうち金各三〇〇万円およびこれに対する遅延損害金の支払を求める。

三、被告大家広二、同柏倉末治の主張(A事件)

(一) 無責

第二事故車運転の亡京子は、第一事故車が対向車線上を滑走して来たのを認め、または認め得たにも拘わらず、漫然センターライン寄りの第三車線を進行したうえ、ブレーキ、ハンドル操作による衝突回避措置を講ずることもなく、しかも下駄履き運転をしていたものであるから、本件事故は同女の過失と道路管理者等の過失が競合して生じたものであり、被告らに責任はない。

(二) 過失相殺

仮に被告らに責任があるとしても、亡京子には前記過失があるから、損害額につき過失相殺すべきである。

四、被告森林伸吉の主張(B事件)

「無責」

本件事故は、第一事故車が時速五〇粁ないし六〇粁で走行中、運転を誤り滑走してセンターラインを超え、第二事故車の進路に進入し、その直前の第二、第三車線上に横向きに停車してその道路を直前に妨げ、かつ第二事故車にとつてはその両側を同方向に走行中の車両があつたためハンドルを切ることもできず、物理的に回避できない事故であつたというほかなく、被告に責任はない。

五、被告国の主張(B・C事件)

(一) 道路の瑕疵について

本件事故現場に敷設された鉄製覆工板は、従来の木製覆工板の欠点を補い、建設省における市街地土木工事公衆災害防止対策要綱に基づき、昭和三九年一〇月以降路面覆工用に使用を義務づけられて一般に使用されているものであつて、鉄板の表面に鋼製パップシートを溶接してスリップ防止措置も講じられているから、本件道路には、道路が通常備ねばならない安全性に欠けるところはなく、また路面が残土片、埃に覆われていたこともなかつた。

(二) 柏倉末治の一方的過失

本件事故は、むしろ、第一事故車運転の柏倉の一方的過失によるものである。すなわち、路面が漏れている場合には、道路は路面の材質いかんに拘わらず滑り易い状態にあることは周知のことであり、さらに本件現場は追越禁止区域でもあつたのに、柏倉は前車を追抜こうと時速四〇粁を五〇粁に加速して第一車線から第二車線に進入したが、前車追抜きに気をとられて安全運転の配慮を欠き、運転を誤つた過失により、センターラインをこえて滑走させ、本件事故発生に至らせたものである。

六、被告東京都の主張(B・C事件)

(一) 道路の瑕疵につき

鉄製覆工板は滑り止め効果がすぐれ、過去の実績からもスリップ事故は極めて少ない。

(二) 責任の帰属につき

被告東京都は、道路法一三条二項、同法施行令一条の二、四および「指定区間内の一般国道の管理の一部を委任する告示」(昭和三三年六月二日建設省告示第一、一四七号)により都知事が、建設大臣から道路占用許可事務を主とする右告示で定められた範囲について道路管理の機関委任を受け、国の機関として事務を処理していたものであるから、右管理は知事による東京都の代表者としての管理ではない。

(三) 事故防止措置

被告東京都は、被告鉄建建設に対する本件工事区間を含む地下鉄工事注文の際、工事施行ことに覆工板の保守、点検について指示を与えたのみでなく、係員を毎日巡回に当らせて指示の徹底をはかり、万全の対策を講じて来たもので、管理に怠りはなかつた。

七、被告鉄建建設の主張(B・C事件)

(一) 道路の瑕疵について

被告国の同主張(前記五、(一))と同旨。

(二) 道路標識等の設置

被告鉄建建設は、本件道路における交通事故防止のため、道路使用の箇所に道路標識、バリケード等を完備し「スリップ注意」、「工事中につき徐行して下さい」と各記載の看板計一二枚を工事該当区に設置しており、この点に関しても手落はない。

(三) 柏倉末治および亡森林京子の過失

柏倉には、前記五、(二)において被告国主張のとおり過失があり、一方、京子にも警音器を二、三回鳴らしただけでハンドル、ブレーキの操作をすることなく、漫然第三車線を進行した過失があり、本件事故はもつぱら右車両側の過失の競合により発生したものである。

第五争点に対する判断

一、本件請求各責任原因について

(一) 被告大家広二、同柏倉末治の責任(A事件)

1 本件事故現場は、車道幅員二一米(両端歩道幅員各二米)、センターラインの表示ある片道三車線の幹線道路、追越禁止区域でその旨の標示もあるが、当時、地下鉄工事中のため、中央線の左右各二車線分、それぞれ約五・八米の部分が、全長約三六〇米にわたつて路面のアスファルトを剥がされ、代りに滑り止め丸型パップシート入り鉄製覆工板を敷きつめ、左右両端の第一車線だけがアスファルトのままであつた。

2 折からの雨で路面は漏れていたが、覆工板敷設の状況は判然、識別できる状態にあつた。

3 被告柏倉は、第一事故車を運転し、環状七号線から第二京浜国道に進入し、川崎方面に向けて第一車線上を時速約四〇粁で進行していたが、同一車線上の先行車を追抜こうとして雨天時における道路状態に配慮することなく、時速五〇粁位に加速していきなり第二車線に乗り入れ、後車輪が横振れをはじめるや、あわてて急ブレーキを踏んだため、右前方約十数米にわたつて滑走、車体の大部分が中央線を超え、車首を上り第二車線に突出した状態で上り第三車線上にほぼ横向きに突込んだため、折から上り第三車線上を進行中の亡京子運転の第二事故車と衝突させた。

右事実が認められ、被告柏倉には覆工板を見落し、道路条件の異る路面への乗入れについての配慮を欠き、また路面が濡れて滑り易い状態であるにも拘わらず、急制動をかけた点など過失のあることが明らかであるから、亡京子の死亡につき、被告柏倉は民法七〇九条の、従つて被告大家も自賠法三条の責任を免れない。〔証拠略〕なお、丙五五号証の記載中、柏倉の後車輪が横振れを始めてから弱くブレーキを踏んだという部分は、丙四〇ないし四一号証の記載とのくいちがい事故の態様からみて、これを採用しない。

(二) 被告森林伸吉の責任(B事件)

亡京子は、第二事故車を運転し、折から川崎方面から五反田方面に向けて上り第三車線上を時速約四〇粁で進行していたが、第一事故車が滑走して自車線上に乗入れて来るのを少くとも二〇米以上手前で発見しながら、たとい第二事故車の左側に併進中の車があつたためハンドル操作は期待できなかつたとしても、第一事故車をユーターン車と見誤つたものか単に二、三回にわたり警音器を鳴らしたのみで、ブレーキを踏むことなく、そのまま衝突に及んだものであり、同女の運転に全く過失がなかつたとは俄かに認められず、従つて、免責事由の立証がないものとして被告森林も亡秀夫の死亡につき自賠法三条の責任を免れない。〔証拠略〕

(三) 被告国、同東京都、同鉄建建設の責任(B・C事件)

イ 道路の瑕疵について

1 事故現場の路面に敷設されていた覆工板は八幡製鉄製の鋼製覆工板で、その各々は、縦一米、横二米の長方形の表面に直径九粍、高さ三・五粍の丸型パップシートが四糎間隔で千鳥状に配列され、滑り止めの機能を果している。

2 右覆工板の滑り止め効果は、アスファルト舗装の路面に比して大差はなく、水に漏れた場合も、滑り易さに差はないこと。

3 本件事故現場においては、覆工板を取替えることがなかつたが、地下鉄工事の工期である昭和四〇年八月から同四三年初の間に本件事故を除いてこれに類似の事故を生じなかつたこと。

4 鉄製覆工板は、従前使用していた木製覆工板に較べてその耐久性、滑り止め効果が大であることから、建設省の昭和三九年一〇月一日制定にかかる市街地土木工事公衆災害防止対策要綱により原則として路面覆工用に使用を義務づけられ、市街地において大幅に利用されているが、これによるスリップ事故は殆んどないこと。

以上が認められ、前記認定の本件衝突にいたつた被告柏倉・亡京子の運転態様を併せ考えると第一事故車の滑走を招いたのは、通常のアスファルト舗装道路においても、同一の事故発生の結果が当然予想できる被告柏倉の重大な運転上の過失にもつぱらよるところであつて、本件道路に事故発生と因果関係ある不測の道路水準の低下・異常、その周知方法の不徹底など、道路の安全性につき欠陥があつたものとは認めがたいところである。

ロ 結び

してみると、本件道路の瑕疵を前提とする被告国、同東京都、同鉄建建設の責任は、その余の点について判断するまでもなく、認められない。〔証拠略〕

二、原告森林伸吉、同小池庄一、同もとの損害(A事件)

(一) 損害の数額

1 葬儀費用等 一七万七、七三〇円

原告森林において負担した葬儀費用その他の雑費が右金額を下らないことが認められる。〔証拠略〕

2 逸失利益とその相続 計二四七万九、六八〇円

亡京子が昭和四一年三月結婚後原告森林の営むクリーニング店を手伝い、また同年九月頃からおにぎり屋をはじめる働き者であつたことが認められるから、昭和四一年度労働大臣官房労働統計調査部作成の賃金構造基本統計調査報告によると、亡京子が二二歳から五〇歳までの二八年間に少なくとも原告ら主張の月二万四、〇〇〇円の収入をあげ、生活費をその二分の一としてその総収益の現価を新ホフマン式計算方法によつて算出すると右金額となる。

(24000×1/2×12)×17.22=2479680)

原告らは、その法定相続分に応じて、原告森林は夫として二分の一、一二三万九、八四〇円、原告小池庄一、同もとは父母として各四分の一、六一万九、九二〇円あて右賠償請求権を取得した。〔証拠略〕

なお、原告らの第一次的主張は、亡京子がおにぎり屋の経営を始めて二か月足らず後に本件事故が発生していて収支のほども不明であること、小規模なこと等を考慮すると、その継続的な収益が甲五号証(任意的な業者の団体である大井新地街飲食組合の組合長が原告森林伸吉の依頼により、根拠を明示せず作成したもの)記載のとおりとは直ちに認められないので、これを採用しない。

3 慰藉料 計三〇〇万円

原告森林については、亡京子との結婚後、間がなく、ともに子供の出生、将来の生活設計等期待の多かつたこと、原告小池庄一、同もとにおいては亡京子がその二女であつたことを考慮すると、その精神的苦痛を慰藉すべく、原告森林につき二〇〇万円、同小池庄一、同もとにつき各五〇万円が相当である。〔証拠略〕

(二) 過失相殺

本件事故の状況は前記責任原因(一)、(二)のとおりであり、被告柏倉運転の第一事故車が、亡京子運転の第二事故車の進路を遮ぎる形でセンターラインを超えて滑走して来たことに対し、亡京子にも事故回避について運転者として要求できる最大限の措置をとつたとまでは認めがたいところであるが、被告柏倉の過失の重大さと対比すると、損害額につき、過失相殺すべき事案ではない。

(三) 弁護士費用 四〇万円

原告らの被告大家、同柏倉に請求し得る損害額は、以上合計額から、原告らの自陳する強制保険金の各受領分を控除した額となるところ、被告らは任意に賠償額の支払に応じなかつたので、本訴請求のため訴訟委任のやむなきに至り、原告森林においてその費用として六〇万円の債務を負担したことが認められるが、事案の性質に従い、右契約金の範囲内で四〇万円を本件事故と因果関係ある損害として加算すべきである。〔証拠略〕

(四) 未済損害総額

すると、原告らが被告大家、同柏倉に対してなお請求できる額は原告森林において三〇六万七、五七〇円、同小池庄一、同もとにおいて各七四万四、九二〇円となる。

三、原告高橋啓太郎、同すいの損害(B事件)

(一) 損害額と過失相殺

亡秀夫は原告らの二男であり、亡秀夫にとつて第一事故車の運行供用者被告大家広二は義兄の関係すなわち原告らの長女礼子の夫であつたこと、亡秀夫は義兄被告大家広二方に住込んで同人の経営する大陽工業有限会社の板金仕事に従事していたこと、第一事故車の運転者である被告柏倉は亡秀夫とは一〇年来の友人であり、やはり七年前から同人の紹介で大陽工業に勤め、被告大家方に従業員として住込んでいた。

そして本件事故は、被告大家広二のもとめにより、その子の七・五・三の祝いに群馬在の高橋家の実家から原告高橋すい(被告広二の妻礼子や亡秀夫にとつての母)ほか親族二名を呼びよせるために、亡秀夫、その弟高橋佳己そして被告柏倉の三名が交替で第一事故車の運転に当つて赴き、原告すいら三名をのせて横浜に向つて帰途発生したこと、がいずれも認められる。右各事情を考慮すると、事故当時の第一事故車の運行目的は、亡秀夫・原告すい(従つてその夫である原告啓太郎につながる)をふくむ被告大家広二の姻族関係者の祝い事のためであり、亡秀夫が交替で運転に当つていたことなど、その事情の限りにおいては、運転者、被告柏倉は亡秀夫・原告啓太郎・同すいにとつて被用者に準ずべき関係から、填補清算ならびに行為評価の一体性のいずれからも被害者側の範囲に属するとするのが相当である。

ところで、第一事故車運転の被告柏倉には前記責任原因一の(一)認定の過失があり、原告らの損害額算定につき、右過失を前記責任原因一の(二)認定の亡京子の運転態様と対比して斟酌すると、少なくとも、その減額分は八〇パーセントを下らないといえる。

してみると、原告らが請求の原因として述べる損害額総計各四九〇万八、二九四円(円未満切捨)が仮にその全額について証明があつたとしても、過失相殺適用による八〇パーセント減額後の残額は各九八万一、六五八円(円未満切捨)にすぎず、右金額は原告らの自陳する強制保険金受領分各一五〇万円を下まわるから、その主張の範囲において、原告らの損害は既に全額填補済であるというほかない。〔証拠略〕

(二) 結び

すると、原告高橋啓太郎、同すいの被告森林に対する本訴請求は理由がない。

四、結論

以上の次第で、本訴請求は、原告森林伸吉、同小池庄一、同もとから被告大家広二、同柏倉末治に対する関係においてのみ、主文の限度で、認容すべく、右原告らのその余の請求および原告高橋啓太郎、同すいの全請求はいずれも棄却するほかない。

訴訟費用について民訴法八九条、九二条、九三条、仮執行宣言につき同法一九六条を適用した。

(裁判官 舟本信光 福永政彦 鷺岡康雄)

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